落書き(あなたへ)

何度目のデートだったかな

歩き疲れて入った見知らぬ喫茶店

まだあの頃は 二人沈黙が苦手だったね


手持ち無沙汰のあなたは

ボールペンを取り出して

コースターになにか書き始めた

不思議顔のあたしを悪戯な瞳で見つめて

黙ってペンを走らせてる


数分後 指先で押さえたコースター

テーブルの上滑らせて得意げに笑う

どうやら二人の似顔絵みたいね

あなたが威張るほど 上手じゃないけど

なんだかちょっと嬉しくて

あたしは二人の名前を書いた


あなたが再び コースターを引き寄せて

日付を書き込み 満足げに微笑む

子供みたいと照れて笑ったけど

気づかれないようにこっそりと

バッグに忍ばせ 持ち帰ってきたんだ


あなたは忘れてるかもしれないけれど

あの日の落書きは あたしの大切な宝物

なんてことないちいさな紙だけど

あなたの温もりに触れられる気がして

捨てられない 大切な宝物になったんだ

あなたとの時間を飾る すべてのアイテムが

宝物になっていくのよ あたしには


淡い恋の思い出たちは

ちいさいほど 懐かしく いとおしい

星野美咲 WEB詩集

Poem Story of Lovely Memory