9. 君の欠片たち

この部屋に君がいない生活が

当たり前になってきた


ひとりの時間もそれなりに

追いやることもできるようになった


なのに


君が残していった欠片たちが

僕の心に影を落とす


クローゼットには 君が選んでくれた服

無造作に積み重ねられたCDは 君と聴いた曲

食器棚の奥にしまいこんだ お揃いのマグカップ

君が忘れていった 片方だけのイヤリング


そして

君が此処に来た最後の日に

アイロンかけてくれたハンカチ一枚


部屋中に残っているんだ

君の欠片たちが


捨ててしまえばいい

何度そう思っても 捨てられず


忘れてしまえばいい

何度そう思っても 忘れられず


君の欠片たち 拾い集めて

繋ぎ合わせることなんてできないのに

戻れるはずもないとわかっているのに


君の欠片たちを

君のすべてを


今 本当に 愛しいと感じている僕がいる


あなたには 失くしたくない欠片

今もありますか?

星野美咲 WEB詩集

Poem Story of Lovely Memory